フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「大したことではない」

 C’était Lucas.
ーJe vous dérange peut-être pour rien, patron… Je ne sais pas encore
grand-chose…  C’est la permanence de Police-Secours qui m’avertit à
l’instant qu’un homme vient d’être trouvé mort place de la Concorde… (---)
J’ai demandé au commissariat de tout laisser en place… Comment ?...
Bon… Si vous voulez… Je vous envoie un taxi...
(©Georges Simenon : Maigret et son mort; Chap.1er)

 電話はリュカからだった。
「警視、たぶん何でもないことでお邪魔したと思うんですが、私もまだ大して知らないので・・・たった今、通信司令部の当直から連絡があって、コンコルド広場で男が死んでいるのが見つかったというんです。 (---) 警察署にはすべて現状のままにしておくように頼みました。何ですって?はい。それでよろしければ、タクシーを回します。」
(#55『メグレと殺人者たち』第1章)

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C’était Lucas(セテ・リュカ)それはリュカだった(半過去形)

Je vous dérange peut-être pour rien < déranger(ジュヴ・デランジュ・プテートル・プーリァン)おそらく何でもないことでお邪魔している

*Je ne sais pas encore grand-chose < savoir(ジュヌセパザンコール・グランショーズ)私はまだ大したことを知らない(文法的には grande chose のはずだが、grand-chose は慣用的に「大したこと」という意味で使われるが、日本語でもそうだが、「大したことないよ」Ce n’est pas grand-chose.(スネパ・グランショーズ)のように常に否定的表現としてのみ使われている。

*la permanence de Police-Secours(ラペルマナンス・ドゥポリススクール)通信司令部(日本の110番対応)の夜間当直者(「救急警察」の訳語のほうがいいかもしれない)

qui m’avertit à l’instant que < avertir(キマヴェルティ・アランスタン・ク)たった今、~ということを私に知らせてきた(単純過去形)

un homme vient d’être trouvé mort(アンノム・ヴィァンデートル・トルヴェモール)男が死んだ状態で見つかったところだ

*place de la Concorde(プラス・ドゥラ・コンコルドコンコルド広場で(固有名詞の場合、前置詞 à la (au) がなくても「どこで」を示す場合がある)
イメージ 1

Crédit photo : Vue de la place de
la Concorde, Paris 8e
©Google street-view

J’ai demandé au commissariat de <
demander(ジェドゥマンデ・オコミサリア・ドゥ)私は区の警察署に~を頼んだ(複合過去形)

tout laisser en place(トゥレッセ・アンプラス)すべて現状のままに保つ

*Si vous voulez < vouloir(シヴヴレ)もしあなたがそうしたいなら⇒ それでよろしければ(フランスでは頻繁に使われる語句)

Je vous envoie un taxi < envoyer(ジュヴザンヴォワ・アンタクシ)あなたのところにタクシーを送ります(現在形)