フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(有名なメグレ警視)ひょっとしてメグレ警視では?

ー Prenez ce billet.  Il est à vous.
ー Vous êtes de la police ?
ー Peut-être.
ー Dites donc, vous ne seriez pas par hasard le commissaire Maigret ?  
Il me semblait bien que je connaissais votre tête.  J’espère que vous n’allez
pas causer d’ennuis à la patronne, car je risquerais d’en avoir aussi.
(©Georges Simenon : La Patience de Maigret; Chap.5)

「このお札を取りなさい。あんたの物だ。」
「警察の方ですか?」
「おそらくな。」
「おやまぁ、ひょっとしてメグレ警視じゃありませんか?あなたの顔を知ってるような気がしますよ。オーナーに迷惑がかからないようにしてほしいですね。私にだってその恐れがありますから。」
(#91『メグレと宝石泥棒』第5章; 原題は「メグレの忍耐」)

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*ホテルの従業員を呼びとめて、50フラン札を見せながら、メグレは期待していた情報を聞き出す。1960年代のデノミ直後のフランス・フランの価値は、1フラン≒¥160~200なので50フランで8千円から1万円になる。チップにしては破格の額である。
イメージ 1

Crédit photo : 50 nouveau francs
(NF), Wikipédia
*参考再出:新フランス・フラン
(フランス語警察用語)ビスケットの缶に札束が

Prenez ce billet.(プルネスビエ)このお札を取りなさい。(命令形)

Peut-être.(プテートル)たぶん、おそらく

Dites donc(ディドン)おや、あれ、(驚きを示す頻用感嘆詞)

vous ne seriez pas < être(ヴヌスリエパ)あなたは~でないのでは(婉曲話法・条件法)

par hasard(パラザール)ひょっとして、もしや
hasard n.m. 偶然、危険、ハザード

Il me semblait bien que < sembler(イルムサンブレ・ビァンク)私にとっては~のように思えた(半過去形)
je connaissais votre tête < connaître(ジュコネッセ・ヴォートルテト)私はあなたの顔を知っていた(半過去形)
tête n.f. 頭、顔、首、生命、頭脳

J’espère que < espérer(ジェスペール・ク)私は~を望む(現在形)

causer d’ennuis à(コーゼダニュイザ)~に迷惑をかける、厄介事を起こす
*参考再出:me faire des ennuis pour ça
フランス語の慣用表現「それは私に関わること⇒ あなたには関係ないでしょ」

patronne < patron(パトロンヌ)n.f. 女主人、女性オーナー

je risquerais d’en avoir aussi < risquer(ジュリスクレ・ダンナヴォワール・オッシ)私もその恐れがありますから en = ennui のこと(厄介事が自分に及ぶ恐れ)