フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(こだわりの酒)電話をかけるのでビール

 Quelques minutes plus tard, il buvait un grand demi dans une brasserie de
l’avenue de Wagram.  Il aurait préféré l’atmosphère de Chez l’Auvergnat mais, dans ce bistrot, il n’y avait pas de cabine téléphonique. (---)
Un autre demi, garçon, et quelques jetons de téléphone.  Mettez-en cinq.
(©Georges Simenon : La Patience de Maigret; Chap.2)

 数分後、彼はワグラム通りのブラッスリで大きなグラスでビールを飲んだ。「オーベルニュ人の店」の方が雰囲気としては良かったが、そのビストロには電話ボックスがなかったのだ。 (---)
ビールをもう一杯、それと電話のジュトンをくれ。5個だな。」
(#91『メグレと宝石泥棒』第2章; 原題は「メグレの忍耐」)

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*20世紀の末でもまだ公衆電話は主要な連絡手段だった。店舗の赤い幌掛けが目印のブラッスリには、店の奥や地下に公衆電話ボックスが設置されていて、カウンターで通話専用のコインすなわちジュトンを買って電話をかけた。携帯電話の急速な普及でその需要は大幅に減少したはずだが、今でも何台かは残っている所もあるかもしれない。アカシア街からワグラム通りまでは歩けば結構な距離になる。
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参考画像:ワグラム通りのカフェバー Le Général
@Google street-view

buvait < boire(ビュヴェ)v.t. 飲む(半過去形)
grand demi(グランドゥミ)大きなグラスのビール
demi は半リットル入ったというビール用グラスのサイズに由来する

Il aurait préféré < préférer(イローレプレフェレ)~のほうがましだった(条件法過去形)

atmosphère(アトモスフェール)n.f. 雰囲気、気分、空気

cabine téléphonique(キャビン・テレフォニク)n.f. 電話ボックス、電話室

Mettez-en cinq < mettre(メッテザン・サンク)5個だな。
mettre には、仮定する、見込む、の意味もある。