フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「それは私に関わること⇒ あなたには関係ないでしょ」

 Deux mille deux cents francs. Les billets de cinq cents étaient neufs. (---)
ー Et alors ? Je suis obligée de mettre tous mes œufs dans le même panier ?
Et si, tout à coup, j’avais besoin d’argent ?
ー Deux mille deux cents francs à la fois ?
Cela me regarde. Je vous défie de me faire des ennuis pour ça…
ー Vous êtes plus intelligente que vous n’en avez l’air, madame Blanc...
(©Georges Simenon : L’ami d’enfance de Maigret; Chap.6)

2千2百フラン。5百フラン札は皆新しかった。 (---)
「だから?取れた卵は全部同じ籠に入れなくちゃいけないわけ? それでもし急に現金が必要になった時は?」
「一度に2千2百フランも?」
そんなの関係ないでしょ。それで面倒な思いをさせるあなたに文句を言いたいわ。」
「ブランさん、あなたは見かけよりもずっと賢い方ですね。」
(#96『メグレの幼な友達』第6章)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

*Deux mille deux cents francs(ドゥミル・ドゥサンフラン)2千2百フラン.
家宅捜索で管理人の女が雑誌の間にはさんで隠していた現金の額である。メグレは女が口止め料としてもらったとにらんだが、女は頑として口を割らない。
1960年以降のフランス・フランのデノミで新フラン(NF = Nouveau franc)に切り替わった頃で、当時の1フランが約160~200円とすると約40万円相当になる。元々フランスでは小切手での取引が多く、日本に比べて高額の現金はあまり使用されない。(札束で支払うことはほとんどない。)
数詞の表記の問題だが、ご存知の通り mille は複数でも s をつけない。cent は s をつける。これは文法というよりも慣習の問題である。

*Les billets de cinq cents(レビェドゥ・サンクサン)500フラン紙幣(複数)
イメージ 1
ユーロ貨幣への移行直前までは、フランス・フランの最高額紙幣は500フラン札だった。参考画像は新フラン直後の500フラン札。(NF)

Crédit photo : Wikipédia

*Je suis obligée de(ジュスィ・ゾブリジェドゥ)私は~しなければならない(女性のセリフなので女性形 e になる)

*mettre tous mes œufs dans le même panier(メトルトゥメズー・ダンルメームパニエ)私の卵のすべてを同じ籠の中に置く(貯金を一つの口座に入れる例え)

tout à coup(トゥタクー)突然

j’avais besoin d’argent < avoir besoin de(ジャヴェ・ブゾヮン・ダルジャン)私に現金が必要になった(半過去形)

à la fois(アラフォヮ)一度に

*Cela me regarde < regarder(スラムルギャルド)その事は私に関わる⇒(あなたには)関係ないでしょ。

Je vous défie de < défier(ジュヴデフィ)私はあなたに抗議する

me faire des ennuis pour ça(ムフェールデザニュイ・プーサ)その件で私を困らせる

*Vous êtes plus intelligente que vous n’en avez l’air(ヴゼトプリュザンテリジャント・クヴナンナヴェレール)あなたは見かけよりもずっと賢い
参考再出◇フランス語の慣用表現「見かけよりもずっと~」