フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語警察用語)証拠不十分

  Cependant il n’avait jamais été condamné, faute de preuves.  Que ce fût sous une identité ou sous une autre, il possédait invariablement des papiers en règle et il parlait avec assez de perfection quatre ou cinq langues pour changer de nationalité à son gré.

(©Georges Simenon : L’Amie de Mme Maigret; Chap.5) 

 

 それにもかかわらず、彼は証拠不十分で決して処罰されることはなかった。ある人物としてだろうとあるいは他の人物としてだろうと、彼はいつでも正規の身分証を持っていた。そして四つか五つの言葉をかなりの完璧さで話して、自分の好きなように国籍を変えていたのだった。

(#60『メグレ夫人と公園の女』第5章)

 

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*4つか5つの言語をほぼ完璧に話す人間の存在をしばしば知らされることがある。一つの外国語だけで四苦八苦している側から見れば、まさに驚異でしかない。凡人のたった一つの願いは、チンプンカンプンだった言葉がある日、霧が晴れるようにわかる瞬間の到来である。好きな言葉一つだけでいいんです。

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Cependant(スパンダン) それにもかかわらず

 

il n’avait jamais été condamné < avoir, être, condamner(イルナヴェ・ジャメゼテ・コンダンネ) 彼は決して処罰されることはなかった(大過去形)

 

*faute de preuves(フォートドゥ・プルーヴ)  証拠不十分

faute de ~がない、~が足りない、~しなければ

 

Que ce fût sous une identité < être(クスフュ・スージュニダンティテ)ある人物としてだろうと(接続法・半過去形)

 

ou sous une autre(ウ・スージュノートル)あるいは他の人物として

 

il possédait des papiers en règle < posseder(イルポセデ・デパピエ・ザンレーグル)彼は正規の身分証を持っていた(半過去形)

 

invariablement(アンヴァリアブルマン)変わることなく、相変わらず 

 

il parlait avec assez de perfection < parler(イルパルレ・タヴェカッセ・ドゥパーフェクシォン)彼はかなりの完璧さで話した(半過去形)

 

quatre ou cinq langues(キャトルウーサンク・ラング)四つか五つの言葉 

 

pour changer de nationalité(プーシャンジェ・ドゥナショナリテ) 国籍を変えるために

 

à son gré(アソングレ)彼の好みのままに