フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語警察用語)死を恐れていた

ー À vrai dire, j’étais le seul à la voir telle qu’elle était… Elle avait si peur de la mort, d’avoir à abandonner un jour son argent, qu’elle n’était pas loin de croire qu’elle ne mourrait jamais… En tout cas pas avant très longtemps… Elle me répétait souvent :

» ー Quand je serai vieille...

(©Georges Simenon : Cécile est morte; Chap.3 de 2e Partie) 

 

「本当を言うと、彼女のありのままを見ていたのは私だけだったんです。彼女は死んで、自分の金を放棄する日が来ることをとても恐れていたので、絶対死なないなどと信じないわけじゃなかった。いずれにしてもそれほど長くないうちにでしょうね。『私が年取ったら・・・』とよく言ってましたよ。」

(#41『セシルは死んだ』第2部・第3章)

 

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ここの文節は読解が難しい。考えようによっては正反対の意味になってしまう。「~ではないということでもない」と二重三重の否定形を原文に忠実に訳していくと、上記のように「意味不明」の訳文(悪文)になる。正直に降参です。

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Crédit photo : L’écran sur Youtube

Téléfilm “Cécile est morte” © Dune/France2  @macri rossi

 

À vrai dire(アヴレディール)本当を言うと

 

j’étais le seul à la voir < être(ジェテルスール・アラヴォワール)彼女に会ったのは私だけだった (半過去形)

 

telle qu’elle était < être(テルケル・エテ)ありのままの彼女(半過去形)

 

Elle avait si peur de la mort < avoir(エラヴェ・シプードゥラモール)彼女はとても死を恐れていた(半過去形)

 

d’avoir à abandonner un jour son argent(ダヴォワール・アアバンドネ・アンジュール・ソナルジャン)ある日自分の金を放棄することになること

 

*qu’elle n’était pas loin de croire que < être(ケルネテパ・ロヮンドゥクロワール・ク)彼女は~を考えないわけではなかった

être loin de ~ などまったく考えていない

 

elle ne mourrait jamais < mourir(エルヌムーレジャメ)彼女は決して死なないだろうと(条件法) 

 

En tout cas(アントゥキャ)いずれにしても

 

pas avant très longtemps(パザヴァン・トレロンタン)長くないうちに

 

Elle me répétait souvent < répéter(エルムレペテ・スヴァン)彼女は私にときどきくり返して言った(半過去形)

 

Quand je serai vieille < être(カンジュスレ・ヴィエィユ)私が年取ったとき(単純未来形)