フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語警察用語)誰かが嘘をついている

ー Il ment.
ー Il y a sûrement quelqu’un qui ment.
ー Vous pensez que c’est moi ?
ー Je n’ai pas dit ça.  Cela pourrait être Alfred.
ー Pourquoi m’aurait-il raconté cette histoire au téléphone ?
ー Peut-être ne l’a-t-il pas racontée, intervint Boissier en la regardant avec
attention.
ー Pour quelle raison l’aurais-je inventée ?  Vous pensez ça aussi, Monsieur
Maigret ?
ー Je ne pense rien du tout.
(©Georges Simenon :Maigret et la Grande Perche; Chap.3)

嘘ついてるのよ。」
「たしかに誰か嘘をついている人がいる。」
「あたしがそうだと思うんですか?」
「そうは言ってないよ。アルフレッドかもしれない。」
「どうして彼が電話でこの話をした訳なの?」
「たぶん彼はその話をしなかったのでは」とボワシエが彼女を注視しながら口を挟んだ。
「何の理由であたしが作り話をすることになるの?メグレさん、あなたもそう思ってるんですか?」
「まったく何も思ってないよ。」
(#65『メグレと消えた死体』第3章; 原題は「メグレとのっぽの女」)

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*泥棒に入った家で死体を見たので逃走したアルフレッドか、その話を聞いて夫の濡れ衣を避けようとメグレに相談に来たのっぽ女か、調査に行って何事もないですよと説明する歯科医とその母か、誰かが嘘をついているのは確かなのだ。
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Crédit photo : Affiche d’un film “Le Dilemme -
Mentir ou Trahir” 2011 VF @allocine

Il ment < mentir(イルマン)v.i. 彼は嘘をついている

Il y a sûrement quelqu’un qui ment.(イリヤ・シュルマン・ケルカン・キマン)たしかに誰か嘘をついている人がいる

Je n’ai pas dit ça.< dire(ジュネパディサ)私はそう言わなかった(頻用句・複合過去形)

Cela pourrait être ~ < pouvoir(スラ・プーレ・テートル)それは~でありうるだろう(条件法・現在形)

Pourquoi m’aurait-il raconté ~ < avoir(プルコヮ・モーレティル・ラコンテ) どうして彼は私に~を話すことがあったのか?(条件法・大過去形)

*Peut-être ne l’a-t-il pas racontée(プテートル・ヌラティルパ・ラコンテ)おそらく彼はそれを話さなかった(倒置法・複合過去形)倒置でない場合は:il ne l’a pas racontée になる l’a の la は histoire 話のことであり、過去分詞 raconté に e がつく。

intervint < intervenir(アンテルヴァン)v.i. 介入した、発言した、仲裁した(単純過去形)

en la regardant avec attention(アンラ・ルギャルダン・タヴェカタンシォン)彼女を注視しながら

Pour quelle raison l’aurais-je inventée ? < inventer(プーケルレゾン・ローレジュ・アンヴァンテ) 何の理由のために私がそれをでっち上げることがあったのか?(現実に反する条件法・過去形)
inventer v.t. 考え出す、考案する、でっち上げる、発明する

Je ne pense rien du tout.(ジュヌパンス・リァンデュトゥ)私はまったく何も考えていない(捜査段階でのメグレの口癖


**事件の概容についてはこちらへ #65