フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語警察用語)その人のことを過去形で話すのは?

ー Peut-être aussi, en épousant mon fils, le croyait-elle plus riche qu’il ne l’est
en réalité. (---)
ー Quand est-elle morte ?
 La vieille dame ouvrit de grands yeux.
ー Morte ?
ー Excusez-moi.  Je croyais qu’elle était morte.  Vous-même en parlez au
passé.
ー C’est vrai.  Mais pas pour la raison que vous croyez.  Elle n’est pas morte ;
(---) elle est partie.
(©Georges Simenon :Maigret et la Grande Perche; Chap.2)

「これもおそらくですが、結婚したとき、彼女は息子が実際よりももっと裕福じゃないかと思っていたんです。」(---)
「彼女はいつ亡くなったんですか?」
 老婦人は大きく目を見開いた。
「亡くなった?」
「すみません。彼女は亡くなっていたと思っていました。あなた自身、過去形で話されてますよね。」
「そうです。でもそういう理由じゃありません。彼女は亡くなっていません。 (---) 出ていったんです。」
(#65『メグレと消えた死体』第2章; 原題は「メグレとのっぽの女」)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

Peut-être aussi(プテートル・オッシ)多分これもですが(接続句的表現)

*en épousant mon fils < épouser(アンネプザン・モンフィス)私の息子と結婚して(現在分詞・必ずしも「~しながら」とは訳さない。これも接続句になる。)

le croyait-elle croire ~(ル・クロヮイエ・テル)彼女は彼を~と思っていた(半過去形・倒置法)
*plus riche qu’il ne l’est en réalité(プリュリシュ・キルヌレ・タンレアリテ)実際以上に彼が裕福ではないかと(虚辞のヌ ne:文法的には neを無視して考えるとよい)il ne l’est の l’ は riche のこと。

参考再出:「虚辞のヌ」の文例
(1)フランス語の慣用表現「見かけよりもずっと~」
beaucoup plus qu’il n’en a l’air
(2)(フランス語警察用語)情報
beaucoup plus facile qu’on ne croit
思ってない以上に⇒思っているよりもずっと簡単な

イメージ 1
Crédit de l’écran de Youtube
‘’Maigret et La Grande
Perche’’;
le film avec Bruno Crémer


Quand est-elle morte ?(カンテレ・モルト)彼女はいつ死んだのか?

*ouvrit de grands yeux < ouvrir(ウヴリ・ドゥ・グランジュー)大きく目を見開いた(単純過去形)
de grands yeux ← des grands yeux 不定冠詞の変形用法

参考再出:フランス語の慣用表現「汚れたシーツに身を⇒ 濡れ衣を着せられ」dans de sales draps「汚れたシーツの中に」


Excusez-moi(エクスキュゼ・モヮ)すみません、ごめんなさい(頻用語)

Je croyais qu’elle était morte < croire(ジュクロヮイエ・ケレテモルト)私は彼女が死んでいたと思っていた(半過去形)  

Vous-même(ヴメーム)あなた自身

*en parlez au passé(アンパルレ・ゾーパッセ)それを過去形で話している
捜査で重要なのは、尋問の相手が被害者の状況をすでに知っているかどうかという点である。ここでは「過去形:~だった」と言うので、メグレは「死んだ」と想定した。

C’est vrai(セヴレ)それは本当です、たしかにそうです(頻用語)  

pas pour la raison que vous croyez(パ・プーラレゾン・クヴ・クロヮイエ)あなたが思っているような理由からではない

elle est partie(エレパルティ)彼女は出ていった、出発した