Presque honteusement, il ouvrit le placard où il gardait toujours une
bouteille de cognac. Elle n’était pas là pour lui mais il en avait besoin,
parfois, pour un client qui s’effondrait au moment des aveux.
Il n’était pas effondré. Ce n’était pas lui qui devait passer aux aveux. Il
n’en but pas moins une large gorgée à même le goulot.
(©Georges Simenon : L’ami d’enfance de Maigret; Chap.7)
まったく見苦しいながらも彼はロッカーを開けた。そこにはいつもコニャックの瓶が入れてあった。その酒は彼のためではなく、時によって自供するときに心が崩れた人のために必要だったのだ。
彼は心が崩れてはいなかった。自供しなければならないのは彼ではなかった。それでも彼は大きなひと口をしかもラッパ飲みで飲んだ。
(#96『メグレの幼な友達』第7章)
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*事件が決定的な解決を迎える直前のメグレはまるで、ダムの水が決壊寸前の状態のように精神的に目一杯になっている。メグレは実はコニャックが嫌いだが、飲まざるを得ない心情に陥ったのだ。身体に悪い飲み方である。
Presque honteusement(プレスク・オントゥーズマン)まったく見苦しいながらも
placard(プラカール)n.m. ロッカー
*cognac(コニャック)n.m. フランス南西部のシャラント地方のコニャック周辺で産出する蒸留酒。 ブランデーの一種。
一般的には高価な酒として知られるが、メグレのような「業務用」としては一瓶 €30.- 程度でも買える。Crédit photo : amazon.fr
parfois(パルフォヮ)時によって
s’effondrait < s’effondrer(セフォンドレ)崩壊した、崩れ落ちた、屈服した(半過去形)
au moment des aveux(オーモマンデザヴー)自供の時に
aveu n.m. 告白、告解、自白、白状
passer aux aveux 自白する
.
Il n’en but pas moins < boire(イルナンビュパモヮン) 彼はそれでも飲んだ(単純過去形)n’en ~ pas moins それでも~する(慣用句)
gorgée(ゴルジェ)n.f. ひと口
à même le goulot(アメームルグロ)しかもラッパ飲みで
boire au goulot ラッパ飲みをする