ー Tu crois que je me suis fourré le doigt dans l’œil ?
ー Au contraire. Il me semble seulement que Florentin en sait encore plus
qu’elle… Et Florentin est moins solide… Il n’a plus rien à espérer, que traîner
la savate à Montmartre et grappiller quelques sous par-ci par-là...
(©Georges Simenon : L’ami d’enfance de Maigret; Chap.7)
「私がとんでもない間違いをしたと思うのか?」
「そうじゃありません。私はただ、フロランタンが相変わらず彼女よりも多くを知っているような気がするんです。それにフロランタンはしゃんとしていません。彼はモンマルトルで貧乏暮らしをして、あちこちから少しの金をかき集めるしかもう望みがないんですよ。」
(#96『メグレの幼な友達』第7章)
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*je me suis fourré le doigt dans l’œil(ジュムスィフーレ・ルドワ・ダンルィユ)直訳で「私は目の中に指を突っ込んだ」⇒「とんでもない間違いをした」(複合過去形)由来としては「へまな仕草」(un geste maladroit) の例えとして言われるようになったと思われる。
se fourrer le doigt dans l’œil(指を突っ込む)
se mettre le doigt dans l’œil(指を入れる)
どちらの動詞でも同じ意味で使われるが、fourrer(突っ込む)のほうが強烈な表現になる。
Au contraire(オコントレール)それとは反対に、それに反して
moins solide(モヮンソリド)しっかりしていない、不安定な
il n’a plus rien à espérer(イルナ・プリュリアン・ナエスペレ)彼にはもはや期待するものは何もない
*traîner la savate(トレーネラサヴァト)「ボロ靴を引きずる」⇒「貧乏暮らしをする」(慣用表現)
traîner v.t. 引く、引っ張る、引きずる
savate n.f. ボロ靴、古スリッパ
grappiller(グラピエ)v.t. くすねる、ちょろまかする、かき集める
par-ci par-là(パーシ・パーラ)あちこちで(フランス語の語順だと「こちあち」になる)