フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

メグレ警視の食卓「仔牛のブランケット」

Il (---) se rendit à la Brasserie Dauphine et prit place dans son coin. (---)
ー Nous avons de la blanquette de veau… vint lui annoncer le patron. Ça
ira ?...
ー Parfaitement…
ー Une carafe de mon petit rosé ?
Il mangea lentement (---) Puis il traîna à prendre son café accompagné du
petit verre de calvados que le patron lui offrait invariablement.
(©Georges Simenon : L’ami d’enfance de Maigret; Chap.5)

彼はブラッスリ・ドーフィヌに行って、いつもの席に座った。(---)
仔牛のブランケットですが、いかが?」と店主が言いに来た。
「文句なしだね」
「カラフでうちのロゼ・ワインでは?」
彼はゆっくり食べた。 (---) それからコーヒーと、店主がいつもサービスしてくれる小さなグラスのカルヴァドスでくつろいだ。
(#96『メグレの幼な友達』第5章)

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se rendit à < se rendre(スランディ)~に行った、赴いた(単純過去形)

*prit place < prendre place(プリプラス)席に座った(単純過去形)prendre +名詞で「~する」という多様な言い方がある。しかしその名詞に冠詞をつけるか否かが微妙に区別されていてわかりにくい。習慣で覚えるしかないかも。ここの prendre place では冠詞がつかない。

dans son coin(ダンソンコヮン)彼の片隅で⇒いつもの場所で

*blanquette de veau(ブランケット・ドヴォー)仔牛のブランケット(料理名)見た目では「クリーム煮」である。仔牛の肉は柔らかくあっさりしている。
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Paris et toi に日本語のレシピがある

カタカナで「ブランケット」というと英語の blanket 毛布のことかと思うが、フランス語の blanquette は毛布とは関係ない。料理の名前でクリームの白 blanc から変化したもの。毛布のフランス語は couverture(クヴェルチュール)になる。語感の近い「モケット」moquette は部屋全体に敷きつめる薄めの絨毯である。

Ça ira ? < aller(サイラ)直訳で「それは行くでしょうか?」⇒「それでOKでしょうか?」⇒「それでいいですね?」(単純未来形)

vint lui annoncer le patron < venir(ヴィンリュイ・アノンセ・ルパトロン)直訳で「来た、彼に、話しに、店主が」⇒「店主が彼に話しに来た」会話文の途中で地の文が入ったので「倒置法」で表記された。(単純過去形)

Parfaitement(パルフェトマン)adv. 完全に、申し分なく

*Une carafe(ユヌカラフ)n.f. 水差し、水やワインを入れるガラス瓶
un quart(アンキャール)とも言う。一人分の小さいカラフが1/4リットルのワインが入るため。この「ユヌカラフ」は外食時には必ず使う(もしくは訊かれる)ので覚えておく必要がある。

Il mangea < manger(マンジャ)食べた(単純過去形)

lentement(ラントマン)adv. ゆっくりと

il traîna à < traîner(イルトレーナ)v.t. 長引かせる、ゆっくりする、引きずる(単純過去形)

accompagné(アコンパニェ)pp. 付け加えられた、添えられた

calvados(カルヴァドス)n.m. りんご酒から作られるカルヴァドス産のブランデー

offrait < offrir(オフレ)v.t. 提供する、与える、

invariablement(アンヴァリアブルマン)adv. いつも、変わることなく