フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(有名なメグレ警視)南仏のホテルのバーで

ー On peut trouver à boire ?
ー Le bar est au fond à droite…
Il s’y rendit et but un verre de bière.
Vous n’êtes pas le commissaire Maigret ? lui demanda le barman
après avoir observé un moment.
(©Georges Simenon : Maigret et l'indicateur; Chap.4)

「飲むところありますか?」
「バーは突き当りの右手です。」
彼はそこに行ってビールを飲んだ。
あなたはメグレ警視じゃありませんか?」とバーテンがちょっと注視した後たずねた。
(#101『メグレと匿名の密告者』第4章)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

*メグレはフランス全土で有名なのか?というとそうではない。このバーテンは若い金髪の男として描かれている。おそらく少し前まではパリの歓楽街で働いた経験があり、新聞やラジオで報じられるメグレの活躍を知っており、実際捜査や聞き込みに歩くメグレを見知っていたのだと思う。
イメージ 1

メグレはバンドル Bandol の駅から観光用の馬車に乗ってのんびりと街を通った。海岸に出てカジノの前を通り過ぎて、とあるので、原作にあるホテル「タマリス」Tamaris は、町の東側の高台にあるホテル「レ・ギャレ」Les Galets あたりではないかと思う。ミシュラン・ガイドにも掲載されている。
Crédit photo : Bandol, 83 Var ©Google
street-view

trouver à boire ?(トルヴェアボヮール)飲むための場所を見つける

au fond(オーフォン)奥の、突き当りの

à droite(アドロヮト)右側に

s’y rendit < se rendre(シランディ)行く、赴く(単純過去形)
but < boire(ビュ)飲む(単純過去形)

un verre de bière(アンヴェールドゥビエール)グラス1杯のビール

*Vous n’êtes pas le commissaire Maigret ? (~ではありませんか?)
この否定疑問文の形は日本語でもフランス語でも、語調を柔らかくする効果がある。この質問に対する「はいそうです」は Oui ではなく、Si(シ)を使う。
厳密にいうと「ではないか?」の質問に「はい、そうではありません。」と答えるならば Non ( je ne suis pas.) を使わなければならない。つまりフランス語では Si か Non の二者択一になるが、問題はむしろ日本語のほうで「はい」だけではますます混乱してしまう。「食べないの?」「はい食べます。」「行かないの?」「はい行きます。」と本文を続けることになる。

barman(バーマン)n.m. バーテン

observé < observer(オプセルヴェ) 観察する、注視する

un moment(アンモマン)一瞬、ちょっと
Un moment s’il vous plaît.(アンモマン・シルヴプレ)「ちょっと待ってください。」