ー Comme on dit vulgairement, on lui donnerait le Bon Dieu sans confession, n’est-ce pas ? Ce pauvre Julien y a cru et l’a épousée malgré mes avertissements (---)
(©Georges Simenon : Maigret et la vieille dame; Chap.2)
「俗に、虫も殺さぬ顔をしてって言うでしょ? かわいそうなジュリアンはそれを信じてしまって、私が警告してもあの子と結婚したのよ。」
(#59『メグレと老婦人』第2章)
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*キリスト教の宗教儀式に関する表現は、一番和訳がしにくいと思う。
donner le Bon Dieu(聖体祭儀、聖餐式)は、キリストの血肉に例えられるパンとぶどう酒を与える儀式だという。懺悔を全くせずに(つまり悪いことは何もしないのでそのまま)聖体を拝受してもいいような人に見えるということを言うのだが、その実はとんでもない人間だと言いたいときに使われる語句になっている。日本語にするときは「実は食わせ者だ」とか「 虫も殺さぬような顔をして」とかに言い換えるしかなさそうだ。この文脈では、老婦人は自分の娘が美貌を盾に不節操な性行であることを嘆いている。
Crédit photo : Le Bon Dieu sans confession; film de Claude Autant-Lara, 1953 @allocine.fr
« Comme elle avait un visage d’ange, on lui aurait donné le Bon Dieu sans confession.»(彼女は天使のような顔立ちをしていたので、告解なしに聖体を与えてしまうところだった。=映画ポスターの左上に掲示)条件法・過去形
Comme on dit vulgairement < dire(コモンディ・ヴュルゲールマン)俗に言われるように(現在形)
*on lui donnerait le Bon Dieu sans confession < donner(オンリュイドヌレ・ルボンデュー・サンコンフェシォン)告解なしに聖体を彼女に与えそうだった(条件法・現在形)
le Bon Dieu 神様、聖体
n’est-ce pas(ネスパ)そうでしょう
Ce pauvre Julien y a cru < avoir, croire(スポーヴル・ジュリアン・イアクリュ)このかわいそうなジュリアンはそれを信じた(複合過去形)
et l’a épousée < avoir, épouser(エラ・エプーゼ)そして彼女と結婚した(複合過去形)
malgré mes avertissements(マルグレ・メザヴェルティスマン)私の警告にもかかわらず