フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語の tu と vous)脅迫状の tu

 Les textes variaient plus ou moins.
«Tu n’en as plus pour longtemps.»
«Fais ton testament.»
«Crapule.»
 Et enfin, la dernière, reprenait le texte du premier message:
«Tu vas crever.»
ー Vous me confiez cette correspondance ?
(©Georges Simenon :Un échec de Maigret; Chap.1er)

 文面は多少なりとも変わっていた。
 『お前はもう長くないぞ。』
 『遺言書を書け。』
 『ゲス野郎。』
 そして最後の文は最初の文言をもう一度使っていた。
 『くたばれ。』
「この手紙を預けてくれませんか?」
(#76『メグレの失態』第1章)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

*脅迫状の文面に使われる主語は vous ではなく tu であることが多い。これは日本語で相手を攻撃する場合の言葉「お前」「おめえ」「てめえ」を使うのと共通する。
イメージ 1

Crédit photo : Couverture de “Lettres anonymes”
de Pierre Ménard @livre.fnac.com

Les textes variaient < varier(レテクスト・ヴァリエ) 文面が変わっていた(半過去形)

plus ou moins(プリュズーモヮン)多少、多かれ少なかれ

*Tu n’en as plus pour longtemps(チュナンナプリュ・プーロンタン)お前はもはや長くない 
n’en avoir pas pour longtemps それをするのに長くかからない、命は長くない

Fais ton testament.(フェトン・テスタマン)お前の遺言書を作れ(書け)(命令法)

Crapule(クラピュル)n.f. 下劣な奴、ゲス野郎

reprenait le texte du premier message < reprendre(ルプルネ・ルテクスト・デュプルミエ・メサージュ)最初の文言を再び使っていた(半過去形)

Tu vas crever < aller(チュヴァ・クルヴェ)くたばれ、死ね(いじめに使われる語句でもある)aller + inf. は命令形に等しい表現になる

confiez < confier(コンフィエ)v.t. 託す、預ける、まかせる