フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語警察用語)棒書きの文字、命はあとわずか

 Le billet, cette fois, disait, toujours au crayon, en caractères bâtonnets :
« J’aurais ta peau. »
 Il y en avait d’autres, que Fumal tenait à la main, tendait au fur et à mesure,
les extrayant lui-même des enveloppes.(---)
« Compte tes jours, salaud. »
(©Georges Simenon :Un échec de Maigret; Chap.1er)

 今度の紙片には、やはり鉛筆の棒書きの文字で『お前を殺してやる』と書いてあった。
 他にもあった。フュマルが自分で封筒から手紙を引っぱり出して、手に持っていたのを順々に差し出した。(---)
お前の命はあとわずかだ、バカ野郎。』

(#76『メグレの失態』第1章)

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*Le billet, cette fois, disait < dire(ルビエ・セットフォヮ・ディゼ)今度の紙片には~と書いてあった(半過去形)⇔紙片が~と語っていた(擬人法)

toujours au crayon(トゥジュー・ソークレヨン)やはり鉛筆で

*en caractères bâtonnets(アン・キャラクテール・バトネ)棒書きの文字で(筆跡をごまかすために大文字で定規を使って書いたような字体)
イメージ 1

Crédit photo : Lettre anonyme en caractères bâtonnets
L’Express publié le 16/06/2017
Actualité - Affaire Grégory(実際の事件で使われたもの)

*J’aurais ta peau < avoir(ジョーレ・タポー)お前を殺してやる
直訳では「お前の皮を取りたいものだ」peau n.f. 皮、皮膚、生命

Il y en avait d’autres < avoir(イリヤンナヴェ・ドートル)それは他にもあった(半過去形)

tenait à la main < tenir(トゥネタラマン)手に持っていた(半過去形)

tendait < tendre(タンデ)v.t. 差し出した(半過去形)

au fur et à mesure(オフュー・エタムジュール)少しずつ、だんだんと、それに応じて、次々と(常用句)

les extrayant lui-même des enveloppes < extraire(レゼクストラィヤン・リュイメーム・デザンヴェロップ)自分で封筒から手紙を引っぱり出しながら(現在分詞)

*Compte tes jours(コント・テジュール)お前の命はあとわずかだ。(命令形=直訳で「お前に残された日数を数えろ」)
Ses jours sont comptés.直訳で「彼の日々は数えられている」⇒「数えるほどしか彼の日々がない」⇒「彼は余命がいくばくもない」

salaud(サロー)n.m. 卑劣漢、バカ野郎