フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「テーブルの下⇒ 袖の下」

ー Savez-vous ce qu’il y a dans le coffre de votre patron ? (---)
ー Oui.  Je préfère dire la vérité. (---)
ー Beaucoup d’argent ?
ー Beaucoup. (---) Dans les transactions qu’il effectuait, il y avait presque
toujours un dessous de table, un certain montant qu’il ne pouvait payer par
chèques.
ー Combien, à votre avis ?
ー Je lui ai vu souvent verser deux ou trois millions de la main.
(©Georges Simenon :Un échec de Maigret; Chap.7)

「ボスの金庫の中に何が入っているか知ってますか?」(---)
「えぇ、私は本当のことを言った方がいいんです。」(---)
「お金が沢山でしょ?」
「沢山です。(---)彼が行なった取引にはほとんどいつも袖の下があったんです。ある金額は彼が小切手では払えないものでした。」
「あんたの感じではいくらぐらい?」
「ときどき見たのは2百から3百万フランを手で渡していました。」
(#76『メグレの失態』第7章)

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*フランスでは小切手による支払いが長く定着していた。特にその場で領収書をもらえない場合などは、換金の記録が残る小切手が確実とされた。逆に何の記録も残らない現金取引がこうした場合には望まれる。この事件当時の1フランを¥40円くらいと想定すると8千万円から1億2千万円になる。

Savez-vous ce qu’il y a dans le coffre(サヴェヴ・スキリヤ・ダンルコフル)金庫の中に入っているものを知っているか?

Je préfère dire la vérité.< préférer(ジュプレフェール・ディールラヴェリテ)私は真実を話した方がいいと思っている(現在形)

Beaucoup d’argent ?(ボクーダルジャン)お金が沢山ですか?

Dans les transactions qu’il effectuait < effectuer(ダンレ・トランサクシォン・キルエフェクチュエ)彼が行なった取引には(半過去形)

il y avait presque toujours < avoir(イリヤヴェ・プレスク・トゥジュー)ほとんどいつも~があった(半過去形)

un dessous de table(アン・ドゥスー・ドゥ・ターブル)袖の下、賄賂(直訳では「テーブルの下」)
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Crédit photo : Dessous de table
(jeudi 28 mars 2013) ©Teki-Tizi

un certain montant(アンセルタン・モンタン)ある程度の金額

*qu’il ne pouvait payer par chèques <
pouvoir(キルヌ・プヴェペィエ・パーシェク)彼が小切手で払えなかったという(半過去形)否定のpasが省略?

Combien, à votre avis ?(コンビァン・アヴォートルアヴィ)あなたの見たところではどれくらい?

Je lui ai vu souvent verser < voir(ジュルイエヴュ・スーヴァン・ヴェルセ)私はしばしば彼が支払うのを見た(複合過去形)

deux ou trois millions de la main(ドゥ・ウトロヮ・ミリオン・ドゥラマン)手渡しで2百から3百万フラン