フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(こだわりの酒)最後の決着の前の一杯

 Le petit juge, lui, se trouva tout près de Maigret qui l’entraîna à l’air libre.
Un verre de bière, monsieur le juge ?
ー Ce ne serait pas de refus, si je parvenais à passer.
 Ils se faufilèrent tant bien que mal. (---) Il entraînait son compagnon replet
chez l’Auvergnat où des habitués déjeunaient déjà et où il faisait frais.
Deux grands demis.
(©Georges Simenon : La Patience de Maigret; Chap.6)

 その小柄な判事がメグレのすぐそばに立っていたので、広い場所に連れ出した。
「判事、ビールを一杯どうです?」
「もしうまく抜けられたら行きましょう。」
 どうにかこうにか彼らはうまく抜け出した。(---) 彼は小太りの判事を「オーヴェルニュ人の店」に連れて行った。すでに常連客たちが昼食をしていて、中は涼しかった。
大グラスのビール2つ
(#91『メグレと宝石泥棒』第6章; 原題は「メグレの忍耐」)

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*メグレは常に事件の担当となった予審判事に捜査の進展状況を報告する義務があった。今回の担当となったアンスラン判事とは初めから気が合って、一緒に食事をしたりしていた。二人目の殺人事件が起きてからは急転直下で、メグレは忙しく立ち回った。大詰めを迎える直前、現場に来ていた判事を誘って一杯飲むことにした。当然、捜査の概容を口頭で報告する機会でもあった。

se trouva < se trouver(ストゥルヴァ)v.pr. そこにいた(単純過去形)

entraîna < entraîner(アントレーナ)v.t. 連れ出した、連れて行った(単純過去形)

à l’air libre(アレール・リーブル)広い場所に/ être à l’air libre 広々とした場所にいる

*Ce ne serait pas de refus(スヌスレパドゥルフュ)喜んでお受けします(条件法)Ce n’est pas de refus(現在形)直訳で「そのことに拒否はない」条件法のほうがより丁寧な言い方になる
refus n.m. 拒否

si je parvenais à passer < parvenir(シジュパルヴネ・アパッセ) もしうまく抜けられたら(半過去形)

Ils se faufilèrent < se faufiler(イルスフォーフィレール) 彼らは巧みに逃げ出した

tant bien que mal(タンビァンクマル)どうにかこうにか、やっとのことで
replet(ルプレ)adj. 太った、でっぷりした

chez l’Auvergnat(シェ・ローヴェルニャ)店の名前「オーヴェルニュ人の店」
イメージ 1

Crédit photo : Une scène de
l’écran sur Youtube de “La
Patience de Maigret” avec
Bruno Crémer, F2
des habitués(デザビチュエ)常連客たち

déjeunaient < déjeuner(デジュネ)昼食をしていた(半過去形)

où il faisait frais < faire(ウ・イルフゼフレ)そこは涼しかった(半過去形)