フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「肌の花に⇒ すれすれの」

ー Je vous écoute, monsieur Maigret.
 On sentait chez lui une ironie, une agressivité à fleur de peau.  C’était le
beau mâle sûr de lui, volontiers bagarreur, qui ne doutait ni son charme ni sa
force.
(©Georges Simenon : La Patience de Maigret; Chap.4)

「お話をうかがいましょう、メグレさん。」
 彼には皮肉るような、すぐにでも攻撃しそうな様子が感じられた。自分に確固とした気持を持っていて、とかく喧嘩早く、自分の魅力や腕力に疑いを抱かない男だった。
(#91『メグレと宝石泥棒』第4章; 原題は「メグレの忍耐」)

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On sentait chez lui ~ < sentir(オンサンテ・シェリュイ)彼の心の内に~が感じられた(半過去形)

ironie(イロニー)n.f. 皮肉、当てこすり

*agressivité(アグレッシヴィテ)n.f. 攻撃性、敵意、攻めかかる様子
une agressivité à fleur de peau 直訳的には「すれすれの攻撃性」ここでは
すぐにでも攻撃しそうな様子」と訳してみた。日仏の語感の差があるので、形容詞を名詞的に、あるいは名詞を形容詞的に訳す方が分かりやすい場合も多い。
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à fleur de peau(ア・フルードゥポー)直訳では「肌の花に」だが、fleur には「敏感な、繊細なもの」という意味も含まれるので、慣用句として「一触即発」「過敏な」などに近いニュアンスを表現するのに使われるようだ。fleur にも peau  にも冠詞をつけずに使う。 (本のタイトルとしても使われている例⇒)

le beau mâle(ボーマル)n.m. 男っぽい男

sûr de lui < être sûr de soi (シュールドゥリュイ)自分に自信のある、確固とした気持を持った

volontiers(ヴォロンティエ)adv. 進んで、喜んで、 積極的に

bagarreur(バガルー)adj. けんか好きな

doutait < douter(ドゥテ)v.t. 疑う(半過去形)