フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「その一口を食べる⇒白状する」

ー Je mangerai le morceau, comme on dit… continua-t-elle. Nous étions au
lit. On a sonné…
ー Vous ne vous y attendiez pas ?
Elle eut une seconde d’hésitation.
ー Non. Pourquoi me serais-je doutée que mon mari viendrait justement cette
nuit-là ?
(©Georges Simenon : Maigret et l'indicateur; Chap.7)

「よく言われるように泥を吐くわ。」彼女は続けた。「私たちはベッドにいました。呼び鈴が鳴ったんです。」
「そう予期してなかったんですか?」
彼女はちょっとためらった。
「いいえ、夫がちょうどその晩にやって来るなんてどうして私が思えるんですか?」
(#101『メグレと匿名の密告者』第7章)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

*Je mangerai le morceauジュマンジュレ・ルモルソー)その一口を食べる⇒白状する(慣用表現)日本語に対応する表現は「泥を吐く」くらいか。ここでは le morceau の定冠詞 le が重要な位置を占める。特定のその切れ端、その一口を食べることによって自白に至るのだから、日本では取り調べ室で「カツ丼」を出すとしゃべり出すという巷説に近い。フランスで何の食べ物を意味するのかは今のところわからない。
*manger un morceau不定冠詞が付く場合は、日常会話で「軽く食べる」意味で頻繁に使われている。On mange un morceau ?(オンマンジュ・アンモルソー↗)

comme on dit(コモンディ)人が言うように

Vous ne vous y attendiez pas ?(ヴヌヴジ・アタンディエパ)あなたはその事を予期していなかったのですか?(半過去形)
s’attendre à ~予想する、予期する、覚悟する
イメージ 1

hésitation(エジタシォン)n.f. ためらい

Pourquoi me serais-je doutée que~(プルクヮ・ムスレジュ・ドゥテク)どうして私が思えたのでしょう?(条件法過去)
Je me suis douté(e) que < se douter ではないかと思った(複合過去形)
Je me doute que(現在形)
mon mari viendrait < venir(モンマリ・ヴィアンドレ)夫が来るなんて(条件法)