フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレと印象的な女性たち)17年ぶりに会ったのっぽのエルネスティーヌ

 Il la reconnut tout de suite.  Il lui sembla qu’elle n’avait pas changé.  Il retrou-
vait son long visage pâle, ses prunelles délavées, sa large bouche trop
maquillée qui faisait l’effet d’une blessure saignante.  Il retrouvait aussi, dans
son regard, cette tranquille ironie de ceux qui en ont tant vu que rien n’a plus
d’importance à leur yeux.
(©Georges Simenon :Maigret et la Grande Perche; Chap.1er)

 彼はすぐに彼女だとわかった。彼女は変わっていないように見えた。青白い面長の顔淡い色の瞳を再び目にした。派手な口紅の大きな口もとは血がしたたる傷口を思わせた。またその眼差しには 、多く物事を見てきたのでもはや大したことなど何もないという人たちの寂しげな皮肉が感じられた。
(#65『メグレと消えた死体』第1章; 原題は「メグレとのっぽの女」)

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*今回の事件のきっかけとなるのっぽ女との再会はかなり文学的な表現になっている。

*Il la reconnut < reconnaître(イラルコニュ)彼は彼女だとわかった(単純過去形)reconnaître  v.t. それとわかる、覚えている、見分ける、承認する

tout de suite(トゥドシュイト)すぐに
イメージ 1

Crédit de l’écran de Youtube
’Maigret et La Grande Perche’’;
le film avec Bruno Crémer

*Il lui sembla que < sembler(イルリュイ・サンブラ・ク)彼にとって~のように思えた(単純過去形)最初の il は非人称

elle n’avait pas changé(エルナヴェパシャンジェ)彼女は変わっていなかった(大過去形)

Il retrouvait < retrouver(イル・ルトゥルヴェ)彼は再び見出した(半過去形)

long visage pâle(ロンヴィザージュ・パル)n.m. 青白い面長の顔

prunelles délavées(プリュネル・デラヴェ)n.f.pl. 淡い色の瞳

large bouche trop maquillée(ラルジュ・ブゥシュ・トロマキエ)n.f. 派手な色の口紅を塗った大きな口

faisait l’effet de < faire(キフゼ・レフェドゥ)~のような印象を与えた(半過去形)faire l’effet de ~

blessure saignante < saignant(ブレシュール・セニャント)n.f. 血が流れているような傷口

dans son regard(ダンソンルギャール)その眼差しには

cette tranquille ironie(セット・トランキル・イロニー)寂しげな皮肉

*ceux qui en ont tant vu que(スーキ・アンノン・タンヴュク) 多く物事を目にしたので … だという人たち
tant ~ que … とても~したので …

rien n’a plus d’importance à leur yeux(リァンナプリュ・ダンポルタンス・アレジュー)その目にはもはや大したことは何もないという