フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレと印象的な女性たち)若い画家と暮らす娘・アンナ

 À côté, sur la banquette, Anna était assise et fumait une cigarette au bout
d’un long fume-cigarette.  Elle s’était habillée. Elle portait une petite robe de
coton sous laquelle on la sentait aussi nue que sous le paréo.  Elle avait une
chair lourde, extrêmement féminine, tellement faite pour les caresses qu’on
l’imaginait malgré soi dans un lit.
(©Georges Simenon : Mon ami Maigret; Chap.4)

 そばの腰掛けにはアンナが座っていて、長いシガレット・ホルダーの先に詰めたタバコを吸っていた。彼女は服を着ていた。かわいい綿の服だったが、ビーチウェアと同じくらいその下の裸体を感じさせた。彼女はきわめて女性的な、重量感のある身体つきで、はからずもベッドの中で愛撫される姿を想像させた。
(#57『メグレ式捜査法』第4章; 原題は「わが友メグレ」)

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*父親がオランダの判事だという道楽息子の画家と暮らしている娘に対する情欲的な描写である。作者シムノンには本質的に色好みの性向があったので、メグレ物にも所々にそうした描写が出てくる。「印象的な女たち」のコラムを設けたのもそのためであり、人間観察の興味深さでもある。

À côté(アコテ)そばに、近くに

banquette(バンケット)n.f. 長椅子、腰掛け、足場、踏み台

fume-cigarette(フュム・シガレット)n.m. シガレット・ホルダー

Elle s’était habillée < s’habiller(エルセテアビエ)彼女は服を着ていた(半過去形)(水着姿ではなかった)

portait une petite robe de coton < porter(ポルテ・テュヌプティト・ロブドゥコトン)かわいい綿の服を着ていた(半過去形)
イメージ 1

Crédit photo : L’écran sur youtube de
“Maigret e il falso amico”, Fight club
(version italienne)

sous laquelle(スーラケル)その下に
on la sentait aussi nue(オンラサンテ・トッシニュ)人は彼女の裸同然を感じた(半過去形)

paréo(パレオ)n.m. タヒチ風のビーチウェア  

une chair lourde(ユヌシェールード)n.f. 重量感のある肉体

extrêmement féminine(エクストレームマン・フェミニン)きわめて女性的な

tellement(テルマン)adv. まさに

faite pour les caresses(フェットプーレ・カレス)愛撫のために作られた(身体)

qu’on l’imaginait < imaginer(コンリマジネ)彼女を想像するといった(半過去形)

malgré soi(マルグレソワ)思わず、心ならずも
dans un lit(ダンザンリ)ベッドの中で