フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(有名なメグレ警視)パリのアメリカ婦人

 À l’étage au-dessus, miss Tuppler tapait à la machine.  Elle était grande,
bâtie en force et à cause de la chaleur, elle ne portait qu’un pyjama dont la
veste était ouverte sur sa poitrine.  Elle n’éprouva pas le besoin de se bou-
tonner.
ー Un meurtre dans la maison ?  How exciting !  Vous avez arrêté le …
comment vous dites ?  le assassin ? … Et votre nom être Maigret ?
Le Maigret de la quai des Orfèvres ? ...
(©Georges Simenon : La Patience de Maigret; Chap.3)

 その上の階ではタプラー嬢がタイプライターを打っていた。彼女は大柄で頑健な身体つきをしていたが、暑さのせいかパジャマ姿で、上着の胸元を開けていた。ボタンを留める必要を見せていなかった。
「この家で殺人ですか? エキサイティングね! 捕まえたんですか、その…何て言いますか? コロシヤ?それであなたの名前メグレである?パリ警視庁のあのメグレ?…」
(#91『メグレと宝石泥棒』第3章; 原題は「メグレの忍耐」)

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*二階に住むアメリカ女性は、本国にパリの情報を送るフリーライターのような仕事をしている。女管理人の話では男の関心をそそるタイプではなく、男出入りは全くないという。アメリカ人にとってもパリは憧れの的で、長期滞在者も多いが、英語で何とか用が足りることもあって、フランス語の習得にはそれほど熱心ではない人も多いらしい。上記の文中にも間違いが3個所ある。( le assassin ⇒ l’assassin / être⇒ est / de la quai ⇒ du quai )

À l’étage au-dessus(アレタージュ・オドシュ)上の階では

tapait à la machine < taper(タペアラマシヌ)タイプライターを打っていた(半過去形)

bâtie en force < bâti(バティアンフォルス)頑丈な身体つきの

à cause de la chaleur(アコーズドゥラシャルール)暑さのせいで

elle ne portait que < porter(エルヌポルテク)彼女は~しか着ていなかった(半過去形)
イメージ 1

pyjama(ピジャマ)n.m. パジャマ

veste(ヴェスト)n.m. 上着

poitrine(ポヮトリーヌ)n.f. 胸

n’éprouva pas < éprouver(ネプルヴァパ)
v.t. 感じなかった(単純過去形)

se boutonner(スブトネ)v. pr. 自分の服にボタンをかける
.
comment vous dites ? < dire(コマン・ヴディト)何て言いますか?(頻用接続句)

*Et votre nom être Maigret ? 動詞を変化させずに原形で使うことは外国人にはよくあることだが、基本中の基本の être 動詞くらいは変化させて使ってもいいはず。 And your name is Maigret ?  を直訳させて使った?

quai des Orfèvres(ケデゾルフェーヴル)オルフェーヴル河岸=この地名だけで「パリ警視庁」の代名詞として通用していた。