フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

メグレ警視の食卓「仔牛のモモ肉とレンズ豆の煮込み」

ー C’est pour déjeuner ?  Une table pour deux ?
 Il n’y avait pas de nappe mais, sur la toile cirée des tables, du papier gaufré
sur lequel le patron faisait ses additions. Sur une ardoise, on pouvait lire, à la
craie :

     Rillettes du Morvan
     Rouelle de veau aux lentilles
     Fromage
    Tarte maison

(---) La rouelle de veau était savoureuse et Maigret ne se souvenait pas avoir mangé des lentilles aussi onctueuses.  Il se promettait de revenir un jour avec sa femme.
(©Georges Simenon : La Patience de Maigret; Chap.2)

「お食事ですか? お二人様で?」
 そこにはテーブルクロスがなく、防水布の上に押し型の紙が敷いてあり、店主はその上に勘定を書いていた。石板にはチョークで次のように書いてあった:
 
 モルヴァン山地のリエット
 仔牛のモモ肉とレンズ豆の煮込み
 チーズ
 自家製タルト

(---) 仔牛の煮込みは美味だった。メグレはこれほどトロトロしたレンズ豆も食べた記憶がなかった。いつか妻を連れてもう一度来ようと心に決めた。
(#91『メグレと宝石泥棒』第2章; 原題は「メグレの忍耐」)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

*メグレは事件の担当で初対面の予審判事と昼食を一緒にすることになった。捜査はまだ始まったばかりだが、まったく気取ったところのない判事に好感を持ったところに、判事の方から誘ってきたのである。メグレは現場の近くにある「オーヴェルニュ人の店」(Chez l’Auvergnat)というビストロに案内する。テーブルに布でなく、紙のクロスが敷いてある店は、一般的に気軽で安く美味しく食べられる。

nappe(ナップ)n.f. テーブルクロス

toile cirée(トヮルシレ)n.f. 防水の布(ビニールが引いてある布)

papier gaufré(パピエ・ゴーフレ)n.m.  押し型のついた紙

faisait ses additions < faire(フゼ・セザディシォン)勘定を書いていた(半過去形)
ardoise(アルドヮズ)n.f. 石板、スレート板

craie(クレ)n.f. 白墨、チョーク

*Rillettes du Morvan(リエット・デュ・モルヴァン)モルヴァンはブルゴーニュ地方の中央に位置する低層の山地。フランスの中央山塊(Massif central)の北端にあたる。リエットは肉をラードで煮込んですり潰したもの。パテと同様に前菜としてパンに付けて食べる。兎の肉(Lapin)のリエットなどがある。

*Rouelle de veau(ルエル・ドゥヴォー)n.f. 仔牛のモモ肉の煮込み料理。
rouelle de porc(ルエル・ドゥポー)rouelle で検索すると現在は豚肉を使っている例が多い。
イメージ 1

Crédit photo : Rouelle de porc aux
lentilles
Canalblog Le Plat du Jour
Cuisine actuelle septembre-
octobre 2010

lentille(ランティユ)n.f. (眼鏡の)レンズ、ほくろ、レンズ豆(小さいが形がレンズに近い扁平形なので)

savoureuse < savoureux(サヴルーズ)adj.  美味の、風味のある

ne se souvenait pas < souvenir(ヌス・スーヴネパ)思い出せなかった(半過去形)

onctueuses < oncteux(オンクトゥーズ)adj. トロトロした、ベタベタした

Il se promettait de < promettre(イル・スプロメッテ)~しようと心に決めた(半過去形)

revenir un jour(ルヴニール・アンジュール)いつかもう一度来る