フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレと印象的な女性たち)ふくれっ面のオルガ

 Une jeune fille achevait de peigner ses cheveux sombres devant le miroir
appliqué au-dessus de la toilette. (---) La fille portait une robe de coton et ses
pieds étaient nus dans des sandales. Elle paraissait de mauvaise humeur.
(---)
 Elle détailla Maigret des pieds à la tête, d’un œil qui n’avait rien de bien-
veillant, saisit son sac à main et franchit la porte.
ー Je m’excuse d’être tombé à un mauvais moment...
(©Georges Simenon : L’ami d’enfance de Maigret; Chap.5)

 若い娘が洗面所の上に掛かった鏡の前で、黒っぽい髪を梳かし終えていた。(---) 娘は綿のワンピースを着ていて、素足にサンダルを履いていた。彼女はぶすっとしていた。(---) 彼女は不愛想な目でメグレを頭のてっぺんからつま先まで眺め回してから、ハンドバッグを取り、ドアの外に出ていった。
「悪い時に当たって申し訳ない。」
(#96『メグレの幼な友達』第5章)

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*オルガ (Olga)は保険の外交員ボダールの彼女である。「ボンマルシェ」デパートの店員だが、昨日の夜セルフ・レストランで出会った彼にナンパされた。今日のせっかくのお楽しみをメグレにぶち壊されて頭に来ている。

achevait < achever(アシュヴェ)v.t. 終える、仕上げる(半過去形)
peigner(ペニェ)v.t. 髪をとかす、櫛けずる
cheveux sombres(シュヴーソンブル)黒っぽい髪

devant le miroir(ドヴァンルミロワール)鏡の前で

appliqué < appliquer(アプリケ)pp. 貼られた、取り付けられた
applique(アプリク)n.f. (服飾の)アップリケ

portait < porter(ポルテ)着る、身につける(半過去形)
イメージ 1

*une robe de coton(ユヌロブドゥコトン)綿のワンピース
robe n.f. ドレス、婦人服、ワンピース

綿はコトン(coton) 英語のコットンcotton と違う


dans des sandales(ダンデサンダル)サンダルを履いて(サンダルは一対なので複数形)

paraissait < paraître(パレッセ)~のように見えた(半過去形)

mauvaise humeur(モーヴェズュマー)不機嫌、腹を立てている

détailla < détailler(デタィヤ)v.t. 細かく眺め回す(単純過去形)

*des pieds à la tête(デピエ・アラテト)直訳では「足元から頭まで」だが、日本語では「頭のてっぺんからつま先まで」眺め回す視線の順序が逆である。

bienveillant(ビアンヴェヤン)adj. 好意的な、愛想のある

saisit < saisir(セジ)v.t. つかむ、把握する(単純過去形)

sac à main(サッカマン)ハンドバッグ
franchit < franchir(フランシ)v.t. 越える、乗り越える(単純過去形)

Je m’excuse de(ジュメクスキューズ)~で申し訳ない

être tombé < tomber(エートルトンベ)複合過去では助動詞は être を使う。タイミングが当たる
tomber mal タイミングが悪い