フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「悪い血に見せるな⇒気をもむな」

ー Reste tranquillement ici et attends-moi… Il y a peut-être un des inspecteurs
qui a un journal à te prêter…
ー Je n’aime pas lire…
ー Bon… Ne te fais pas de mauvais sang...
(©Georges Simenon : Maigret et l'indicateur; Chap.6)

「ここでおとなしくして待っているんだ。たぶん刑事の誰かは新聞を貸してくれるよ。」
「読むのは好きじゃない。」
「まぁいい。気をもまなくていいよ。」
(#101『メグレと匿名の密告者』第6章)

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Reste < rester(レスト)とどまる、残る

tranquillement(トランキルマン) おとなしく

attends-moi < attendre(アタンモヮ)私を待て

à te prêter(アトゥプレテ)お前に貸すような

*直訳で「悪い血」という面白い単語が出てきたが、微妙に広い意味がありそうだ。
sang(サン)n.m. 血、血液、血の気、血筋、血統
Ne te fais pas de mauvais sang(ヌトゥフェパ・ドゥ・モーヴェサン)「血の気が悪く見えるようにするな」⇒「気をもむな」「心配するな」(慣用表現)
se faire du mauvais sang(スフェールデュモーヴェサン)心配する、気をもむ
se faire(スフェール)+形容詞または無冠詞名詞で「~になる」「~に見せかける」「~に見えるようにする」
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« Mauvais sang » という同じ題名の映画(レオス・カラックス監督1986)の邦題は『汚れた血』となっていた。これには「まともでない者の血筋/血統」というニュアンスがあったようだ。(ランボーの詩集『地獄の季節』の中の一篇から)