フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレと印象的な女性たち)喪服姿のリーヌ

Quand Line Marcia parut, en grand deuil, blonde et pâle, sur le seuil, il y
eut un frémissement dans la foule, comme au passage d’une vedette, et
on aurait pu penser que les gens allaient applaudir.
(©Georges Simenon : Maigret et l'indicateur; Chap.4)

金髪で青ざめた顔のリーヌ・マルシア正装の喪服姿で戸口に現れたとき、集まった群衆の中に、まるで人気女優が出てきたようなざわめきが起きた。人々が喝采しかねないようにも思えた。
(#101『メグレと匿名の密告者』第4章)

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parut  < paraître(パリュ) 現れる、姿を見せる

*en grand deuil(アングランドゥイユ)正装の喪服姿で
deuil(ドゥイユ)n.m. 喪の悲しみ、哀悼、悲嘆、喪のしるし、喪中、喪服
金髪美人の若い未亡人というだけでも物見高い人々の興味は掻き立てられたのだろうと思われる。確かに喪服姿の女性も魅力的に見えることがある。
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sur le seuil(シュールスィユ)戸口に

frémissement(フレミスマン)n.m. ざわめき、震え、そよぎ、戦慄

dans la foule(ダンラフール)群集の中に

comme au passage d’une vedette(コムオーパサージュ・デュヌ・ヴデット)人気女優が通りかかったような
vedette(ヴデット)n.f.  人気女優、花形、スター、モーターボート

*on aurait pu penser que(オノーレ・ピュパンセ・ク) 考えられそうだった、考えてもいいくらいだった
これは典型的な「条件法の構文」で、日本語でも少々まわりくどい言い方があるのと同様。条件法は、現実では起こりえない状況を「起きてもおかしくないくらい」と想像する気持を表わすのに使う。 ここでは avoir pu penser の複合過去形が3人称 on の条件法で aurait pu penser となる。またこの場合 que 以下の従属節では動詞は半過去形 allaient < aller となっている。

applaudir(アプロディール)v. 喝采する、拍手する、称賛する


*蛇足ながら、フランスの Le Parisien という新聞社の箴言集サイト(Citation Célèbre)小説家マルセル・プルーストの言葉が掲載されている。「女性にとってあらゆる出来事は、葬儀でさえも、服の試着で決着する。」