フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「もうだめだ」

Maigret sentait le poids de sa fatigue (---)  Il avait hâte de s’étendre dans son lit et
fermer les yeux.
ー Fatigué?
Je n’en peux plus.
(©Georges Simenon : Maigret et l'indicateur; Chap.1er)

メグレは疲労の重みを感じた。 (---)  彼は急いでベッドに横になると目を閉じた。
「疲れたの?」
まいったよ。
(#101『メグレと匿名の密告者』第1章)

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*午前2時に寝ているところをたたき起こされて、殺人現場に急行し、被害者の妻にそのことを伝えに行き、さらに被害者が直前まで働いていたレストランに赴いたので、メグレはすっかりくたびれてしまった。「疲労の重みを感じる」とはあまり日本語では言わない表現だ。「身体がだるくなった。」のほうがいいかも。

sentait < sentir  v. 感じる
poids  n.m.(ポワ)重さ
fatigue  n.f.(ファティグ)疲労、疲れ
avoir hâte de ~:(アトド:慣用句)急いで~する
s’étendre  v.(セタンドル:代名動詞)横になる、寝そべる
étendre  v. 横に伸ばす、広げる


je n’en peux plus(ジュナンプゥプリュ)< n’en pouvoir plus(慣用表現)「もうだめだ」「力尽きた」 en には総体的な意味が込められているようだ。
基本語句の  je ne peux pas「できません」(ジュヌプゥパ)に類似した表現。