フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(有名なメグレ警視)私は警視のメグレだが

 La caissière était une petite brune, maigrichonne, qui avait de beaux yeux
noirs.
Je suis le commissaire Maigret
ー Je sais...
(©Georges Simenon : Maigret et l'indicateur; Chap.1er)

レジの女は小柄な茶褐色の髪のやせっぽちだったが、きれいな黒い目をしていた。
「私は警視のメグレだが…」
「知っています」
(#101『メグレと匿名の密告者』第1章)

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*メグレが自己紹介する場面は珍しい。いつもは黙って警察バッジを見せると、相手がはっとして急に態度を変えることになる。作者のシムノンは女性に対する観察眼が鋭く、無名の登場人物にも一筆書きのように印象をさっととらえて描写することが多い。

caissière  n.f.(ケシエール)女性の会計係

maigrichonne < maigrichon  a.(メグリション(ヌ))やせぎすの、やせっぽっちの
メグレ Maigret の名前の語源も maigre a.(メグル)「やせた」から来ているという説がある。