フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語警察用語)圧し潰された犬たち⇒ 三面記事

un vieux spécialiste des chiens écrasés, qui faisait chaque soir son petit tour au quai des Orfèvres, s’était assis sur la dernière marche de l’escalier, juste en face de la porte du laboratoire, et fumait patiemment sa pipe.

(©Georges Simenon : Le revolver de Maigret; Chap.3) 

 

三面記事担当のベテラン記者は、毎晩パリ警視庁内をひと回りしているが、犯罪科学研究室の扉の真向いの階段のステップに腰をかけて気長にパイプをふかしていた。

(#67『メグレの拳銃』第3章)

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Crédit d’image : Les chiens écrasés - Guillaume Guéraud - @Babelio

 

*un vieux spécialiste des chiens écrasés(アンヴュー・スペシァリスト・デシァンゼクラゼ)三面記事を書いているベテラン記者

des chiens écrasés(複数形)直訳で「車に圧し潰された犬たち」だが、新聞の「三面記事」を意味する。日本語の「三面記事」も特殊な慣用表現だ。昔、日刊紙が4頁しかなかったときに、1~2頁は政治・経済、3頁目に社会・犯罪・事故・雑事が掲載されたためとされている。フランス語では「犬が車にひかれたというような取るに足らない記事欄」という言い方に由来する。

 

**参考再出:フランス語の慣用表現「車にひかれた犬たち⇒ 雑報記事」(2019.11.02)

https://maigretparis.hatenablog.com/entry/2019/11/02/085106

 

qui faisait chaque soir son petit tour < faire(キフゼ・シャクソワール・ソンプチトゥール)毎晩ひと回りしていた(半過去形)

 

au quai des Orfèvres(オー・ケデゾルフェーヴル) パリ警視庁(直訳では「オルフェーヴル河岸」だが、その住所にあったパリ警視庁の代名詞として通用していた)

 

s’était assis sur la dernière marche de l’escalier < être, s’asseoir(セテタッシ・シューラ・デルニエールマルシュ・ドゥレスカリエ) 階段の最後のステップに座っていた(代名動詞の半過去形)

 

juste en face de(ジュスタンファス・ドゥ)ちょうど真向いの

 

la porte du laboratoire(ラポルトデュ・ラボラトワール)研究室の扉

 

et fumait patiemment sa pipe < fumer(エ・フュメ・パシァマン・サピプ)根気強くパイプをふかしていた(半過去形)